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2012年11月11日 (日)

(Work)生命倫理教育プロジェクトの勉強会

今日は、文部科学省の大学間連携共同教育推進事業の1つ、生命倫理教育プロジェクトの第一回勉強会でした。

このプロジェクトは、2012年11月10日の朝日新聞朝刊にも「論文捏造防げ 倫理教育始める」のタイトルで紹介されたプロジェクトで、論文データのねつ造や、患者の同意を取らずに臨床試験を実施するなど、不正が目立つ医学系の研究者や学生に、研究倫理を学んでもらうプロジェクトです。

今週の木曜日に、このプロジェクトのスタートを記念したシンポジウムが行われるのですが、その前に勉強会がスタートしました。
今日のテーマは3つ。

1: ヘルシンキ宣言の変革 (畔柳 達雄先生)
2: 生命倫理研究倫理の基礎 (青木 清先生)
3: 共同研究の国際化時代における臨床研究倫理指針(藍 真澄先生)

IRBの委員を10年ほどやっており、製薬メーカーで事業部長をしていたこともあるので、ヘルシンキ宣言は当然知っておりましたが、その歴史は全然知らなくて、今回畔柳先生が詳しくご説明してくださって、衝撃を覚えました。たまたま畔柳先生と帰りも駅までご一緒させていただき、勉強会のお話しの続きを伺えて、とっても勉強になりました。

ヘルシンキ宣言はアメリカ人が作ったと信じ込んでいたのですが(確かにアメリカがドラフトしたバージョンが現在の原型となっておりますが)、もともとはドイツに原本があったそう。この時期、多くのドイツ人がアメリカに移民し、NY近辺にいたことで、このドラフトに多大なる影響を与えたそうです。

1947年のニュルンベルグ綱領定立から始まり、1948年WMAジュネーブ宣言採択、1949WMA国際・医の倫理綱領採択、1962年米キーホーバー・ハリス修正法成立、FDC法改正、1964年ヘルシンキ総会でのヘルシンキ宣言まで、わずか17年の間の出来事も、フランス、イギリス、アメリカの綱引きのお話しがあり、実に17年の間にこれだけのことが起き、そのうえでヘルシンキ宣言が作られたのだと分かりました。

その後、1966年の米NIHの人体実験、臨床研究に関するガイドライン、FDA「新薬臨床試験に関するガイドライン」でのインフォームドコンセント規定のお話しがあり、アメリカとWMAの対立についてのご説明がありました。

1975年WMA東京総会におけるヘルシンキ宣言大幅改定では、人種問題などの関係でいろいろなものがストップしそうで、開催できるかも不確定だった時期だそう。翌年のブラジルで、この東京総会の大幅改定が決まったそうです。そんないきさつも、すべてを見てこられた畔柳先生だからおっしゃれることなのでしょう。

この時は、アメリカがWMA脱退していたので、オブザーバーとして日本は呼んだそうです。今のヘルシンキ宣言の骨格は、この1975年の東京総会でできたものだそうです。私は、てっきり昔から今の形だと思っていたのですが、なんと11年の歳月を経て、現在の形になったのかと思うと、その間の調整のお話しなどを聞くにつれ、どれだけ大変な作業だったのだろうと思います。

1989年の香港総会では、IRBが初めて入ってきて、1996年のサマーセット・ウェスト総会では、プラシーボ問題が勃発。1999年には、エイズの研究とプラシーボ問題が2大問題となり、途上国対先進国の図が鮮明になったそうです。

倫理とは、必ずしも、世界中すべての国で同じ倫理基準ではなく、文化、宗教によっても大きく変わってくるものです。いろいろな国の駆け引きの中で、落としどころを見つけながら前に進んでいった結晶が、ヘルシンキ宣言なのだと、理解しました。

自分の倫理観、国の倫理観、グローバルの中での倫理観。それを議論することが、生命倫理の一番の勉強法なのではないかと思います。

参考資料: 
ヘルシンキ宣言(原文)
ヘルシンキ宣言(和訳)

青木先生の「生命倫理の基礎」では、研究倫理にまつわる歴史をご講義いただきました。第二次世界大戦におけるナチスドイツの人体実験は、歴史の授業で習ったためしっておりましたが(ニュルンベルグ継続裁判にて23名(うち医師20名)が裁かれた)、日本の751部隊についてはほとんど知らず、帰宅してから調べてみました。日米の司法取引で無罪になったことなど、日本も戦時下ではドイツと同じようなことをしていたことを知らずに今まで来てしまっています。

1950年代のウィローブロック肝炎研究、1960年代 ユダヤ人慢性疾患病院研究、1960年代ミルグラム研究(これは大学で学びました)、1970年代サン・アントニオ避妊研究、1970年代T-ROOM交渉研究、1932-1972年タスキギー梅毒研究等の様々な問題から、(一番大きく影響したのはタスキギー梅毒研究)1973年ヘルスケア及び人対象試験の質に関する公聴会が開かれ、1974年国家研究法が成立、1978年ベルモントレポート、1979年生命・医療倫理の4原則の提唱に至ったアメリカの歴史を学びました。

どれも弱者(知的障害者、人種、囚人、女性など)に対する生命倫理感の問題であったこと、そして、今でもこの問題は形を変えてアメリカでは存在しているそうです。特に、治験での社会的弱者の利用は、見て見ぬふりをしている領域だそうです。

日本でも、ここ数年、私が治験審査委員をしていて気になり始めているのが、社会的弱者の治験組み込みです。精神科系疾患に関しては、ベンダーが「このように答えれば治験に組み込んでもらえる」と指導しているケースもあり、(本来であればそのような疾患にはならない健常人に対して)、お金欲しさに治験に参加する人も出始めています。そして、人集めをしなければいけない、それがお金になるという理由で、グレーゾーン(限りなくブラックに近いですが)でビジネスを繰り広げている人が出てきているのも事実です。

性善説なのか性悪説なのか。

倫理の議論をするときに必ず出てくるテーマです。

今日はとても勉強になった1日でした。

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